金星は英語でVenus
明けの明星、宵の明星と言うほどに、天の星の中でも金星は一際目をひく美しい星です。
金星の軌道
金星は太陽から2番目に近く、太陽系の中で地球よりも内側を回っています。

つまり、地球から見ると太陽と金星が重なることがあり『金星の太陽面通過』と呼ばれています。
その周期は1.6年 8年間で5回太陽面を通過します。
そしてその軌道を図に表すと左図のようになります。
365日で太陽の周りを回る地球の内側を金星は225日で回ります。
平均584日(1.6年)ごとに、重なって8年間で一巡します。
この1.6という数字は人が最も美しいと感じる比率『黄金比立』の1.618と近く地球が8回公転する間、金星は13回公転し、5回重なり合います。その重なりによって美しい五芒星を描くのです。回転方向は地球とは逆です。
5.8.10はフィボナッチ数列
五芒星
この『五芒星』には『聖なる女神』という意味もあります。
古代の人々は、残された壁画などから天体現象を理解していたとされています。
であれば、金星の完璧に五芒星を作り出すその動きと、美しく光さまを見て、まさにVinus、美の象徴と捉えたのかもしれません。
古代の美の女神
古代バビロンにおいて他人豊穣の女神といえばイナンナという名の女神を挙げることができます。イナンナは後ににイシュタルと呼ばれるようになります。そして、そのイシュタルという名には金星という意味があるのです。
やがてイシュタルは、各地の大地母神、豊穣と美の女神として世界中に広まっていきます。
アスタレテとなり、アフロディーテとなり、ヴィーナスとなり、ハトホル女神となり・・・・各地の大地母神、豊穣の女神となって地球上全土と言っても過言ではないほどに広まりました。
八芒星、十六芒星
先ほど五芒星というキーワードが出てきましたが、イシュタルを象徴する形は『八芒星』『十六芒星』だと言われています。
しかし、これも実は金星と関係した形だということができます。
例えば、一年のある日に金星の位置を確認します。翌年の同じ日に金星の位置を確認すると、1年間で135度移動しています。そして、8年後に現れる形が『八芒星』です。

人々は空を見上げ、金星の出現とその明るさを毎日見比べて、国家の存亡をも占うようになったようです。
そのためでしょうか。金星で象徴されるイナンナはのちに絶対権力を持つエンリルと同等の権力を持つことになったのですが、
国家が平穏な時はエンリル、国家が分裂したり統一されたりする際にはイナンナが最高神として崇められていました。
明けの明星 宵の明星
そして、先に述べた『明けの明星』『宵の明星』という時間による見え方は男性性と女性性の両方を持ち合わせていると考えられ、しばしば神話の世界では両性具有の神を指す象徴として述べられています。
例えば、イナンナから派生した?あるいは同じとみられるキュベレー(アグディスティス)は両性具有の神でした。

天照大神
日本を代表する女神といえば天照大神を思い浮かべる方はきっと多いと思われます。
日本神話の絵本では、美しい女性として描かれていますし、何と言っても素戔嗚尊の姉として描かれています。しかし、男性として、あるいは両性具有の神として描かれているものも存在しています。
考えてみたら、天岩屋戸での裸体に近い天宇受賣命(アマノウズメ)がエロティックでシャーマニックな踊りをしたときに、それを覗き見したいと思う欲求は男性的な欲求と考えるのが自然なことでしょう。
そこで、たびたび天照大神はイナンナである。という説や、いやいやアマノウズメがイナンナなのだと考える人も多くいます。
しかし、『金星』というキーワードで考察してみると、素戔嗚尊の方が『金星』を表しているのだと考える人もいます。
それは、素戔嗚尊の行いに起こった天照大神が身を隠して正解が暗黒になるというあのエピソードですが、それをそっくり惑星の動きに当てはめることができると考えるからです。
素戔嗚尊の行動に、怒った天照大神が、天の岩戸に、隠れてしまって、暗黒になったという、あのお話。
これを、惑星の動きに当てはめることができる。
素戔嗚尊が高天原に昇るということが、宵の明星が現れることであってすなわち、夜の訪れを意味していて、太陽である天照大神は隠れて暗黒になります。
そして、素戔嗚尊が高天原から地上に落とされる、つまり明けの明星が輝いてから天照大神が顔を出す。ということです。
聖書中の金星
イエスキリスト
イエスキリストは、ギリシャ語の新約聖書の黙示録の中で『輝く明けの明星』と呼ばれています。
また、明けの明星は『知識』や『知恵』とも関連づけられていて、明けの明星を見たり、空海のように明星が口に入ってきたり、明星から疫病から免れる術を聞いたり、画期的な知識を与えられたりしたエピソードがたくさん存在しています。
堕天使
イエスキリストが明けの明星と呼ばれているのに対し、聖書の中で堕天使(悪魔)として名を挙げられている『ルシファー』は明けの明星、金星をさすラテン語です。
こちらは、かつては輝ける場所にいたのに天から追放されたことを象徴的に表していると解釈することが多いようです。しかし、実際に金星を表しているのだという見方をする人もいます。
そして、先ほどの素戔嗚尊が金星だとする説で根拠とされるのが、天照大神の一件だと書きましたがもう一つ、聖書中の堕天使であるルシファーと素戔嗚尊との類似が挙げられます。
素戔嗚尊もいわば、堕天使だからです。
一方、金星を表す大元、イナンナですが、こちらも堕天使。
理由は定かではありませんが天から降らなくてはならなくなったというエピソードがシュメールの粘土板には書かれています。
『イナンナの冥界下り』とされる物語です。

土星
さて、興味深い点として、キュベレー、キュベレーはプルギュア語で『クババ』ですが、その配偶神は『ニヌルタ』です。
このニヌルタを象徴する星は『土星』です。
ニヌルタは『ニムロデ』だと言われており、ローマでは『土星』を意味する『サトゥルヌス』として崇拝対象となります。

キュベレーはギリシャではレアと呼ばれますが、レアを象徴する星は当然ながら『金星』レアの夫『クロノス』は『サトゥルヌス』と同一視されています。