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あくまで、都市伝説、またはエンターテイメントの読み物として、お楽しみいただけたら幸いです。
しかし案外真実はこんなところに転がっている者なのかもしれせんよ!
日本の風習、年末の大掃除
この記事はこんな人のために書いています
結局大掃除した方がいいの?
この記事を読むとこんなことがわかります
大掃除は単に家を清潔にすること以上の意味が
ありました。
大掃除は神事だった
大掃除は『おかげさま』の心で満ちていた。
結論 1年間ありがとうの気持ちで掃除してみたらいかがでしょうか?!
年末掃除の始まり
毎年年末になると家中を大掃除するご家庭も多い事でしょう。
大掃除は、江戸時代には既に行われていました。当時は『すす払い』と呼ばれ、寛永17年(1640年)以降に江戸城中で毎年執り行われることが定例となっていました。
それを見習って江戸の武家屋敷も煤払いもするようになって町屋も見習うようになり、年末には家中をきれいにするのが恒例になっていきました。
すす払いを行うのは12月13日です。この日付には重要な意味が含まれていました。
それは、鬼宿日と呼ばれる一日で、その鬼宿日に掃除をすることはとても重要なことと考えられていました。
鬼宿日
すす払いに制定された日、鬼宿日とはどんな日なのでしょうか。
鬼宿日の読み方
『きしゅくにち』とか、『きしゅくび』などと読みます。
鬼宿日 とは二十八宿(にじゅうはっしゅく)の一つで鬼宿に当たる日のことを言います。
二十八宿 の一つ
二十八宿というのは中国の周の時代を起源とした、天球の考え方をもとにしています。
地球を中心に惑星や恒星の位置をもとにしていて、月が地球を一周する間に通過する28個の星座を表しています。
『○宿』という星座が28個あり、その一つが『鬼宿』となります。
※日本では古くから、この考え方を運気を上げるための先人の知恵として生かしてきたと言われています。
鬼宿日は、鬼が宿に泊まりに行き外へ出歩くことがないので、鬼に邪魔をされずに、何をするにも大変良い日で、二十八宿の中でも特に最上の良い日とされています。
鬼宿日に城中を掃除する理由
最良の日に城の中の大掃除をしたのはなぜでしょうか?
それは日本に伝わる来訪神、つまり新しい年には新しい年の神様がやってくる、という考え方が根底にあったのです。
年神さまの考え方
新しい年の年神様が、気持ちよくきてくださるように、城の中をきれいにしてお迎えの準備をしたのです。
来年の年神さまが来てくれるように、
家をきれいにした
ちなみに、年神さまは新年の初日の出とともに来ると言われています
江戸やその近郊の年中行事を解説した斎藤月岑(げっしん)の『東都歳時記』の挿絵がこちらです。
この日は、朝早くから、奉公人や町内の若い衆が集まり、雨戸を開けて、畳をひっくり返し、棚のものを全ておろし、家財道具を片付ます。
そして、掃除が終わると、城主をはじめ全ての人が胴上げされたそうです。
下の『東都歳時記』の挿絵の中程にその様子が描かれています。
掃除中邪魔にならないように、隠れている老人や子供達までも胴上げされました。

ここで忘れていけないのは、現年神様はまだ家の中にいるということです。
胴上げしなくてはいけなかった理由
胴上げといえば、スポーツなどで優勝したとか、難関校に合格したといった、おめでたいことを思い浮かべます。
この場合は大掃除が終わってよかった!という意味でしょうか?
絵を見ると、雨戸を開け、畳をあげ、棚から物をおろして、家財道具を片付け、掃除をしています。並行して胴上げをしている様子もあります。
つまり、終わってバンザイ!しているわけではなく、何らかの意味があるということがわかります。
胴上げは、老人から、女子供まで全てに人に対して行われた、とも言われていて、並行して行わないと間に合わなかったのかもしれません。
そして全ての人の胴上げが終わると、蕎麦や鯨汁が振る舞われるのが慣習でした。
そこまでして、胴上げした理由は胴上げの起源を調べると見えてくるかもしれません。
胴上げの起源
長野県、善光寺の年越し行事、五穀豊穣を祈願する『堂童子』という行事の終盤で、体を抱え上げて空中に投げる習慣があり江戸時代初期から行われていたことから、胴上げの由来ではないか?と言われています。
当然ながら、この胴上げは『神事』ということができます。
大相撲における胴上げ
大相撲の千秋楽では神酒廻(まわ)しと手締めをして行司を胴上げします。土俵に降りてきた神様を、天に送り返すためで『神送りの儀式』というそうです。
胴上げに神様を送り出すという意味があルのなら、煤払い中の胴上げも、現年神様に無事にお帰りいただこうという意味が含まれているのかもしれません。
煤払い中の胴上げ
まちゃ、胴上げのもう一つの意味としては、『避邪(へきじゃ)』(悪いものを取り除く)があります。
似たように意味合いで、体を空中に放り投げる、体を揺すって悪いものを取り除くような厄落としは全国各地で見られます。
汚れをきれいにする
当時は現代と違って、日本家屋では例外なく煤が溜まりました。毎日の炊事には竈門を使いますし、囲炉裏や、照明のための蝋燭(ろうそく)もありました。
暖房として火鉢を使っていましたし、虫除けとして木片を燃やすこともありました。
ですから、一年に一回くらいは普段手入れできない部分も掃除する必要があったことでしょう。
すす払いの道具に注目
すす払いの際に使用した道具は、ススオトコとか、ススボンテンと呼ばれるもので、特別につくられた箒(ほうき)でした。
ただの箒ではありません。
妊婦のお腹をこの特別な箒で撫でると安産になるという言い伝えもあります。
さらに、出棺後に箒ではき出すことで魂を家から出すことができると言われています。
一年に一回のすす払いでこの箒を使う意味は、単に家中に溜まったすすを払うと同時に、家の中の邪気(邪鬼)を払おうと考えたということで間違いないはずです。
そして、これらの箒はすす払い後も大切にとって置かれたり、用済みになった場合には松飾などと一緒に小正月のどんど焼きに出されていました。
すす払いはすすを払うことだけが目的ではなく、厄落としの意味を持ったものだったのです。
考え合わせると
鬼宿日という最良の日に行っている
胴上げしている
特別性の道具を使っている
鬼宿日という最良の日を選んだこと。
胴上げしていたこと。
特別な道具を使ったこと。
以上の3点を考え合わせると、すす払いは、家中をきれいにするという目的以上の意味があったことが理解できます。
ではそれ以上の意味とは何でしょうか。
家中を浄めて、年が明けた元旦の日の出とともにやってくる年神様をお招きする準備をすること。
胴上げすることで、現年神様におかえりいただくこと、
また自身のその年の厄を落とすこと。
特例があった
商売をしていて大変繁盛している場合、雨戸を締め切ってすす払いをしていたそうです。理由は居着いてくださっている福の神に出てかれては困るからです。
すす払いに日本人の心を見た
現代の私たちは、そんな昔の人々のようには考えない人が多いかもしれません。
何か成功したら自分の頑張りだと思い、感謝の気持ちを持つことが少ないかもしれません。
昔の人が、新しい年を迎えるために力を合わせて掃除して、目に見えない神様という存在に頼り、商売が繁盛したら神様のおかげと感謝して日々を過ごしていたのだと思うと、何だか温かい気持ちになります。
全てが終わって手伝いに来てくれた人々には、料理が振る舞われたそうです。『おかが様で助かりました。ありがとうございます。』そんな声が聞こえてくるような気がします。
現代社会に生きる私たちにも見習える考え方ではないでしょうか?
現代の大掃除
現代は当時とは違って、すすで部屋が黒くなることはないでしょう。そして、当時より明るい部屋で過ごしているので、汚れたらその都度掃除して年末にあえて大掃除をする必要も無くなっているのかもしれません。
掃除というだけで何となく憂鬱になるかもしれません。
ですが、すす払いの人々が取り組んだ『おかげさまで助かりました。ありがとうございます』の気持ちを当てはめるなら、
汚れは私たちの日々の暮らしを支えてくれたからこそつくもので、感謝を抱き、満ち足りた気持ちで取り組めるものなのかもしれません。