シュメール

イナンナの冥界下り

イナンナとは

本題に入る前に、ざっとイナンナと、イナンナを取り巻く環境について頭に入れておきましょう。

イナンナというのはシュメールの豊穣の女神のことだと一般的に言われていますが、シュメールの時代には男神、女神の概念はありませんでした。

男神でも女神でも、『神(diĝir)』なのです。

別名はイシュタル、ウルク文明期のウルクの守護神として崇拝の対象となっていたようです。

ウバイド文化 ウバイド文化というのは、簡単に言えば、シュメール文明の元となった文化のことです。 そもそもシュメール文明とは何のことかというと、...

この、神に性別の概念がないという考え方は、古代日本も同じです。

後にアフロディーテ、ヴィーナス、と呼ばれるようになっていったと言われています。

イナンナは一般的にはアンのたくさんいる子供の一人とされています。

天界の最高神3柱は『アヌ』『エンリル』『エンキ』です。そして、神々などの運命を決める7柱と呼ばれる神々の集団、さらに、50柱と呼ばれる『アヌンナキ』『アヌナキ』『アヌンナク』『アナナキ』さまざまな呼ばれ方をする神々の集団について述べられています。

7柱に属するのが誰で、50柱が誰なのかは定かではありません。

アヌンナ (Annuna) 」(五十柱の偉大なる神々)と

「イギギ (Igigi) 」(小さな神々)という言葉が合わさって『アヌンナキ』と呼ばれています。

時代が進んで、バビロニア神話に登場する『アヌンナキ』は兄妹神『アヌ』と『キ』の子等で構成されているとされています。

イナンナの冥界下り

主な登場人物は

天界の女神『イナンナ』

冥界の女神『エレシュキガル』

二人は姉妹で、エレシュキガルが姉、イナンナが妹です。二人はアンの子とされていますので、アヌンナキの一員か、もしくは、さらに上位の7柱なのかもしれません。

そして、上の図の3柱、アヌ(アン)、エンリル、エンキ、

イナンナの従者ニンシュブル

冥界の門番ネティ

イナンナの夫のドゥムジ

ドゥムジの姉ゲシュティアンナ

ドゥムジの兄ウトゥ

エンキの造った、クルガルラとガラトゥル

シャラ神、ラタラク神

ストーリー

イナンナはある時なぜだか、冥界に行って冥界の支配者で姉でもある、エレシュキガルに会いに行く事にします。

(後のストーリーで、更なる支配を欲したためだとわかります)

冥界へ行くためにイナンナは多くのものを捨て、その代わりに7つの神の力の象徴を身につけます。

冥界へ行くにあたり、自身の従者であるニンシュブルに三日三晩自分が戻ってこない時には、上位の神々に助けを求めるようにと申し渡して出かけます。

冥界についたイナンナは門番に自分がイナンナで、冥界の女王エレシュキガルに自分が来たことを告げるよう求めます。

エレシュキガルはそれに対し、冥界の7つの門を閉じて7つの神の力の象徴として、身に纏っているものを一つづつ剥ぎ取っていき最終的に全裸にして死体とされ釘に吊るされます。

そして、同時にエレシュキガル自身も病に伏せることになります。

イナンナが戻ってこないので、従者ニンシュブルはまずはエンリルの元へ助けを求めにいきますが、エンリルは

天地のみならず冥界の力も欲しがった。冥界に行ったものは戻ってはならない』と言って助けることを拒否します。

次にナンナと元へ向かいますがやはり助けを断られてしまいます。

次にエンキの元へ向かいます。エンキも同じような反応ですが、可哀想に思い自分の体から二つの生命体、クルカグラとガラトゥルを創作し助けの手を差し伸べます。

それによってイナンナは息を吹き返すことができますが、冥界の掟として身代わりを立てる必要がありました。

従者のニンシュブルにしてはどうかと提案されますが、自分のために尽力したニンシュブルを身代わりにはできません。そんな時、元夫のドゥムジがイナンナの死に際して喪に服していないことを知りドゥムジを身代わりに冥界へ送る事にします。

ドゥムジは恐れて姉のゲシュティアンナの元へ助けを求めます。そして、ドゥムジとゲシュティアンナは半年交代で冥界へ下る事になりました。

二人は牧羊神と植物神でしたから、それぞれが地上にいない半年間は不作に見舞われる事になりました。

元夫のドゥムジはタンムズと呼ばれるようになり、植物が死ぬ盛夏の時期に、穀物の神の死を嘆き悲しみ、数日後に再生を喜ぶという祭りが行われるようになりました。

タンムズの祭りは聖書の中でも述べられていて、異教の神々の一つとされています。エゼキエル8:14

死生観

イナンナは豊穣の女神でしたからイナンナが死んでしまったことで地上の植物は枯れ様々な禍に見舞われてしまいます。

しかし、エンキの作ったクルカグラとガルトゥルは『命の食べ物』と『命の食べ物』を持って、はえのように門を通り抜けてイナンナの元へと行きました。

植物と水によって地が再生していく様を表しているようです。

そもそも冥界の場所は山の上かもしれない

一般的に、冥界といえば下の世界のような気がしませんか?ましてや、冥界下りですから。

しかし、『下る』を表すシュメール語には『下る』という意味と『上る』という意味の両方があります。そして、『冥界』と訳されている言葉は『山』という言葉から派生した言葉です。

シュメールでは冥界は『山』にあるという認識だったのかもしれず、日本の山岳信仰に似ているような気もします。