神話

叙事詩 エヌマ・エリシュの創世神話 1

私たちが生きているこの世界の起源や、宇宙全体としての秩序について考えることは太鼓の昔から人類の謎であることに変わりありません。

宇宙、この地球は果たして、『神が作った』のでしょうか。『神』は存在するのでしょうか。

多くの宗教は神が全てを創造したのだと言います。

しかし、かのホーキング博士は神の存在を否定していました。一部の人々からは無神論の考え方を完全否定されていました。しかし、どちらが真実なのかを証明できる人は地上に一人として存在しません。

今回は古代バビロンの粘土板の記録に描かれた、世界の始まりについてお伝えいたします。

宇宙の始まりの記録

『叙事詩ーエヌマ・エリシュ』

人類の根源、始まり、誰しもが一度は考えるであろう宇宙の始まり、人類の意味、・・・過去に何があったのかと言いった、私たちの生きる世界全体を説明しようとした文献で最も古い発見はシュメール人の残した7枚の粘土板の文書です。

それは『叙事詩ーエヌマ・エリシュ』と呼ばれているものでシュメール人の時代よりやや後のバビロン第一王朝時代、紀元前1894年頃のものであろうと言われています。

上ではまだ天空が命名されず 下では大地が名付けられなかった時

神々を初めてもうけた男親、アプスー、ムンム、彼らを全て生んだ女親ティアマト

彼らの水が一つに混ざり合った

男親アプスー⇨淡水 女親ティアマト⇨塩水 が、ムンム⇨生命力の力を得て一つに混ざり合うことから世界が始まったと述べています。

そしてのちにその混合水の中から男神ラハム女神ラハムが生まれその後、アンシャルキシャルが作られこの二人が力を持つ様になります。

草地は織りなされず、アシのしげみは見あたらなかった。

神々はいずれもまだ姿をみせず、

天命も定められていなかった時、神々がその混合水のなかで創られた。

神ラハムと神ラハムが姿を与えられ、そう名づけられた。

かれらの年が進み、背丈がのびていく間にアンシャルとキシャルが創られ、かれらにまさるものとなった。

アンシャルとキシャルの間にアヌという子供が生まれます。アヌはヌディムンド(エア)をもうけます。

そうしてかれの生き写しアヌはヌデイムンド (エア) をもうけた。
アンシャルは長子アヌを(自分と)瓜二つにつくった。

アンシャルと、アヌと、エアは瓜二つだったと書かれています。

自然=神から、人格神へ

上で見た『エヌマ・エリシュ』で述べられている創世記冒頭のアプスームンムという神は、淡水と塩水と述べられていることから、何かしらの人格的な神というよりは『自然=神』と捉えられています。

しかし、ここで登場するムンムは生命力とされており、ムンムというエネルギーの力を得た=二人の補佐役がムンムであるとされています。

自然=神

この叙事詩を宇宙創世に当てはめるなら、男神ラハム女神ラハムは淡水と塩水が混じり合った上下の区別のない『沈泥』の様なもので、アンシャルキシャルという天と地を分つ地平線によって混沌とした泥が天と地下の水へと分離したと考える学者が多い様です。

冒頭で述べられている『上ではまだ天空が命名されず、下では大地が名づけられなかったとき』と呼応していると解釈できます。

神が性格(人格)を持つ

かれらは日を重ね、年を加えていった。

かれらの息子がアヌ、父祖に並ぶもの。

アンシャルは長子アヌを瓜二つにつくった。

そうしてかれの生き写し、アヌはヌデイムンド (エア) をもうけた

世界の始まりに存在していたアプスー、ティアマト、ムンムという3神。そこからラハムとラハム。

ラハムとラハムからアンシャルとキシャル。

アンシャルからアヌ。アヌからヌディムンド(エア)と、神々の出現を述べているのですがこれらは全て自然が神であったものが、徐々に人格神へと変化していったことが伺えます。

アヌとエア

アヌは上空に広がる天 であると同時に一体の人格のある神でもありました。エアは地下の淡水、大地の神でもあり知恵の神と呼ばれた一体の人格のある神でした。

天地が生成される様子を、神々の介入によって行われたと記した文献は世界各地の神話や伝承の中にもあります。例えば、日本の国産み神話、中国の『天地開闢』などです。

その後、アンシャル、アヌ、エアらがアプスーとティアマトに対立する様になります。

エアはアプスーの殺害。アプスー上に自身の家を造りその家を『アプスー』と名付けます。

アプスー=原初の海 が、新たな神エアによって取って変わったと書かれています。

新たな、アプスーの中でエアはマルドゥクを生み出します。

実はこのマルドゥクがこの叙事詩の主役です。

これは混沌としていた、泥地が地下水を含んだ大地に変化したことを意味しているのだと思われますが、エアがアプスーを殺害したとの表現から、まるで自然現象に意思が介在していたように書かれています。

マルドゥク

マルドゥクは後にバビロニアの最高神とされ母親はダムキナ シュメール初期の記録ではダムガルヌンナと呼ばれています。

アプスーが殺害されたことの危機感を感じたティアマトはキングを総司令官として復讐を試みます。

一方、他の神々はエアの子供、マルドゥクに対しティアマトに対抗するよう促します。

マルドゥクはそれを受ける代わりに戦いに勝利したなら自分こそ神々の主権者になるという条件を認めさせます。

そして、第IVの粘土板には遂にティアマトの命を奪いティアマトの体から宇宙を形成します。

マルドゥク はティアマトの脚にのり、 彼の仮借ない三つ又の鉾で頭蓋骨を打ち砕いた。

彼が彼女の血管を切ると北風がその血をどこか分からないところへ運び去った。

彼の父祖たちはこれを見て、喜び歓呼の声をあげ、お祝いの贈りものの数かずを送った。 主は手を休め肉魂を分断して手の込んだ美事な作品でも創ったらどうかと彼女の死骸を眺めていた。

彼は干し魚のようにそれを二つに切り裂き、 その半分を固定し、天として張りめぐらした。

彼はそれに閂を通し、番人たちを置き彼らにその水分を流出させてはならないと命じた。

ティアマト

マルドゥクに殺されたティアマトの体の半分が天となり、半分が地となったと書かれています。

このティアマトですが、龍蛇として表現される水を司る神でしたから、その体の半分が天となったことで天には水が満ち雨が降り、時には豪雨を起こすため天に閂を設けたのです。

ティアマトはシュメール神話における原初の海を神格化した『ナンム』と同じであるという見方をする学者が多い様です。

どちらでも、二つの側面を持つことが特徴で、塩水と淡水が結ばれるという平和裡に創造の女神という面と、原初の混沌としたカオス状態の恐ろしさの両面を持ち合わせています。 

ティアマトが産んだ戦士

・ムシュマッヘ(七岐の大蛇)ティアマト自身とする説のある、7つ頭の大蛇、あるいは7匹の大蛇。

・ウシュムガル(龍)ムシュマッヘと同一視されるが、別存在であるとも言われている凶暴な竜

・ムシュムシュ(蠍尾竜)「バビロンの竜」として名高い神々の聖獣

・ウガルルム(巨大な獅子)ティアマトの権力と軍勢の強さを示す怪物(ライオンの様)

・ウリディンム / ウルマフルッルー一般には狂犬だが、獅子人間とも解釈できる獰猛な犬。

・ウム・ダブルチュ(嵐の魔物)ライオンの身体に鷲の頭と翼を持った姿で描かれた、神が使役する風の魔物の一種

・ラハム / ラハブ(海魔)海の嵐などを神格化したとされる海の魔物。

・ギルタブリル/ギルタブルウル(蠍人間)太陽神シャマシュと深い関係にある、マシュー山(双子山)の理性的な守護者。

・クサリク(有翼の牡牛)『ギルガメシュ叙事詩』に登場する天の雄牛と同一視される。

・バシュム / ウシュム(毒蛇)角の生えた蛇の一種(アッカドのバシュム / シュメールのウシュム)

・クルール(魚人間)雄の人魚。

人類創造

第VI粘土板にはマルドゥクが人を作る様が描かれています。

わたし (マルドゥク) は血をまとめて骨をつくりだし、

最初の人間をつくろうと思う。その名は『人』だ。 わたしは最初の人間、『人』を造りだそうと思うのだ。

あらすじは、ティアマト軍の司令官キングを殺害しその血を元に人を作り出します。

さらにマルドゥクは地下世界(新しいアプスー)をアヌ(シュメールのアン)とエンリルとエア(シュメールのエンキ)に統治させます。

エンリルといえば、シュメールの主神であり、そのエンリルに統治を委ねることによって神々をも統治する立場を得ることに成功します。

続く