伝承・伝説

失われた10支族

旧約聖書によれば、イスラエルは12部族だと書かれています。

失われた10支族とは、ソロモンの治世が終わったあとユダ王国から10の部族が離脱し、この離脱した部族のことを『北の10部族』と呼んでいます。

二つに分裂した王国は、北はヤラベアム王、南はレハベアム王の統治となりやがて行方不明となります。

今回は統一王国から、ソロモンの死去までのあらすじを中心にまとめてみます。

イスラエルの12支族  ヘブライ人 ヘブライ人というのは他の民族から見たときの呼び名で、自らはイスラエル人、イスラエルの民と名乗っていました。 そ...

イスラエル王国の建国は紀元前1021年頃だと言われています。

ソロモンの統治後、王国が分裂し200年後にはイスラエル王国は滅亡したとされています。しかし、散り散りになった各部族は脈々とどこかの土地で息づいていて、それが『○○ユ同祖論』として各地で語り継がれています。神から選ばれし、特別な民族という思想が元になっています。

裁き人の時代

ヨシュアという人のことージェリコの城壁を崩すー 出エジプトの記述の中で、重要人物の一人にヨシュアという人がいます。 モーセの従者として描かれています。今回はこの人物にまつわる出...

出エジプトの時代、モーセが民衆を引き連れてエジプトを脱出しようと試み、様々な奇跡の記録がされている出エジプト記ですが、結局モーセは約束の地を見ることなく、その後継者としてヨシュアがヨルダン川を横断する事になりました。

約束の地、『カナン』(パレスチナ地方)へと侵攻し、先住民を次々と征服して行きます。

ヨシュアが死に、多くの人々は専心を要求する神に対し、不忠実となり多神教の影響を受け始めます。

多くの民衆はその土地の神を容認したり、あるいは土地の残りの人々と結婚したりするようになってきました。多神教の宗教を容認する人々が増えてきたのです。

しかし、純粋なイスラエル人は唯一の神を信仰しなくてはなりません。

神は専心を要求する神で、神の後ろ盾があってこの地までやってきてた、我々は選ばれた民族なのだから、一切の容認は許されない!と考える人々もいました。

そこで、裁き人と呼ばれる人々が立てられました。

裁き人の時代は、人の王が登場するまで続きます。

士師記 バラクとデボラ、ギデオン、サムソン ヨシュア記の次の書、士師記の中で出てくる3人の重要人物がバラクとデボラ、ギデオン、サムソンです。 バラクは裁き人でデボラは女預言...

その後の出来事を見ても、一貫して旧約聖書の神は自分に対する専心を要求されていて、従う場合は繁栄、従わない場合は破滅の記録が記されています。

神と民との約束は絶対であり、救済策が差し伸べられるというストーリーになっています。

それ故に、現代のユダヤ人のようにどんな苦難をも乗り越える強固な国民性が生まれたのでしょうか。

統一国家

やがて人々の間から、王を立ててほしいとの声が上がるようになります。

当時の預言者(裁き人には含まれていない)サムエルを通してイスラエル初の人間の王が選ばれます。

サウル

分裂前のイスラエルの最初の王は『サウル』です。サウルは容姿端麗裕福で有能という非の打ち所のない人物でした。

一方で、ちょっとシャイな部分のある人物だったらしく、くじによって(神託を問う)サウルが王に選ばれた際には、恥ずかしさを感じて人々に見つからないように隠れる、ということがあったようです。

そんな奥ゆかしいサウルですが、多神教へと傾き、心霊術に頼るようになります。

ダビデ

サウルが戦っていた相手にゴリアテという巨人がいましたが、サウルは倒すことが出来ませんでした。

その強敵ゴリアテを一人で倒したのが少年だったダビデです。

サウルはゴリアテを倒したダビデに対し、自分の立場の危うさを感じたのか、ダビデに対して敵意を抱き、ダビデの殺害を計画するようになります。

サウルの死後、ダビデが次の王になります。

ダビデはボアズとルツの子孫で、ユダ族、イエスキリストの家系へと繋がって行きます。

ダビデとサウルには血縁関係はありません。

アダムからイエスにつながる系図 アダムからノアまで アダムのエバが最初にも受けた子供がカインとアベルでしたが、アベルはカインに殺害され、カインは東方の逃亡の地で...

とはいえ、ダビデが王になった際、ダビデに付き従ったのは『ユダ族』だけでした。

他の部族を率いる王はサウルの息子の『イシ・ボセテ』でした。『イシ・ボセテ』はサウルの息子です。

2年後、イシ・ボセテは暗殺されます。

イシ・ボセテはサウルの一番下の息子でサウルの王位を継承しました。「バアルの人」という意味のエシュバアルという名で呼ばれることもあります。イシ・ボセテは弱い王だった?ようで、アブネルというサウル軍の長が有能な参謀となり即位していたと言えるようです。

ダビデはイシ・ボセテが暗殺された際に、紛いなりにも?イスラエルの部族の王であったことを重んじて、彼を義人と呼び、暗殺者たちを処罰し、民衆には嘆き悲しむように命じたことが述べられています。

この暗殺事件をきっかけにユダ族以外の部族が戻ってきて、再度統一国家となる道が開かれます。ダビデは40年ほど王として君臨します。

ソロモン

次の王が『ソロモン』でした。ソロモンはダビデとバテシバの息子です。ソロモンは念願だった神の家『神殿(エルサレム神殿)』を建立し、さらには政府関係の建物や全国規模の建築計画を実施し、ソロモンの王国は栄華を極めます。

しかし、そんなソロモンもやがて多神教を受け入れるようになります。

『アシュトレテ』や『ミルコム(モレク)』に従い始めます。モレクのために高き所を築き、犠牲を捧げ始めます。異教の妻たちを喜ばせたいという気持ちからの行動で、神への忠誠心を捨てたわけではなかったのかもしれませんが、神はソロモンから王国を奪うことにします。

ある時、預言者アヒヤがこんな予言をします。

アヒヤは着ていた新しい服を手に取り12切れに引き裂いた。

アヒヤはヤラベアムに言った。

10切れを取りなさい。イスラエルの神エホバはこう言っています。

『私はソロモンから王国を引き裂いて取り上げ10部族をあなたに与える』父ダビデとは違い私の道を歩まず、私から見て正しいことを行わず、私の法令と法規を守らなかったからだ。

後に北の王となる、ヤラベアムは有能な人だったと述べられていて、ソロモンは彼を監督として用いるほど、信頼していました。

このことを知ったソロモンはヤラべアムを殺そうと画策しますが、ヤラベアムはエジプトに保護されソロモンの死後、ソロモンの息子のレハベアムの新しい王権に対し、民衆の支持を得たいなら民の重荷を軽くするよう求めます。

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そして、ソロモンの死後、予言が成就します。

10支族が行方不明となる

ユダとベニヤミン、レビと祭司たち以外は北王国と呼ばれるようになり首都をサマリアに移し、ヤラベアムが10部族最初の王となります。

これが、旧約聖書で述べられている10部族の始まりとなります。

レハベアムはヤラベアムのこの良心的な助言を受け入れませんでした。

結局、10部族はレハベアムへ反旗を翻す形でヤラベアムを自分たちの王として立て、分裂してしまいました。

レハベアムは3年くらいは比較的良い王だったようで、国を強化しユダの繁栄に貢献しますが、のちに母型のアンモン人の宗教の影響を受け偶像崇拝するようになって行きます。

一方、ヤラベアムは、王になってから、民衆が神殿のあるエルサレムへ登っていく姿を見るようになり、不安に感じ始めます。

このままでは民衆は自分から心が離れてダビデの家に戻って行ってしまい、自分を殺すかもしれないと思い始めます。

そこで、民衆が崇拝対象と見なすための、仔牛の像を二つ作り、それを中心とした宗教を確立します。

さらには聖日を設けて、人々に犠牲を捧げるよう指導します。

その後、レハベアムもヤラベアムも死にますが、子孫の第二まで受け継がれ、やがて全ての部族の行方がわからなくなっています。