天地という不動の双生児が完成された時
母神が女神たちを産んだ
天地の諸プランが確定されたのちに一体何を変革するのか?
一体何を造ろうというのか?

偉大な神アヌンナキ達よ、一体何を変革しようとしているのだね?
この質問をしたのはエンリルという神です。その場にいた神で名前が挙げられているのは、アン、エンリル、ウトゥ、エンキ、ニンマフ(ニンリル)大神とアヌンナキ達と書かれています。
答えはこうです。
二柱一組のラムガ神を殺し、その血で人間を作るのです。
神々が担ってきた仕事は人間の仕事になるのです。
そして作られた二人の人間に、アンウレガルラ、アンネガルラと名前をおつけください

そして、人が造られニダバ女神がその場所に配されて、記録を取るように命じられます。
人々を作ろうと、人間の製造方法を提案したのはエンキです。そして、粘土で形を作るという作業をしたのがナンムという神でした。
様々な創世神話
出土された粘土板からは多くのよく似た創世神話が発見されています。
大方、以下のような内容です。

天地創造神話.1
神々にたくさんの子供が生まれ、女神達は結婚のために天地にそれぞれ配置されます。
下級の神は運河を作り、粘土を踏み、過酷な生活を強いられています。
そんな中、エンキだけは寝台に横たわり眠りから目覚めることがありません。彼こそが苦役を引き起こした張本人ではないか!と神々から不平不満の声が上がります。
そこで、エンキの母ナム(諸説あり)がエンキを起こしあなたがこの苦しみを引き起こしているのだから?あなたが『人間を創造すべき』と告げます。
人間創造
しかし、エンキはその任務をナンムに委ね、ナンムはニンマハの助けを借りて人を形作り、最初の人間を作ります。
神々はエンキを褒め称え、エンキは祝宴を設けます。
優れているのはどちらか
ニンマハはエンキに対して(?)競争心を抱き、他の人間を作ることを提案します。エンキはそれを受け入れ、ただし運命はエンキが決めるように取り決めます。
6人の人間
そこでニンマハは6人の人間を作り出します。そかし、彼らはそれぞれに身体欠陥がありました。
エンキは一人目の腕に難のある人間を『王の僕』に、二人目の視力の難がある人間を『音楽家』に、三人目の足の弱い人間を『金細工の職人(?)』さらに、悪霊の取り付いた人の悪例を取り除き、子供の産めない女性には『王妃の家』で使えるようにし、生殖機能のない男性には『宦官』として働くように取り計いました。
次は逆にエンキが人を作り、ニンマハが運命を決めることになりました。
エンキが作った人は、多産の女性と、ウムウルと言う名前の異常な人間でした。ウムウルは、自分で起きることも、手を伸ばすことも、話すこともできません。(乳幼児もしくは老人でしょうか)
このような伝承の中では人は最初から成人として形づくられるのが一般的ですから、ウムルムが乳幼児だとしたら非常に特筆すべき事柄だと言うことができます。
ウムルムをどうすることもできなかったニンマハは、あなたの作った人間は生きても死んでもいない。と述べます。
エンキはニンマハに対して、『ニンマハの作った欠陥のある人間にも、自分(エンキ)は適切な運命を与えることができたのだ(勝ち目など最初からないのだと言う意味)』と言います。
天地創造神話.2
上記の天地創造神話よりもさらに前の世代の神々達が既に様々な労働を担っていたことが描かれている粘土版があります。
アトラ・ハシース叙事詩と呼ばれるものです。
それによると、アヌンナキがイギギに七倍の仕事をさせていたと、描かれています。
後期バビロニア神話によれば、アヌンナキは兄妹神アヌとキの子達であり、アヌとキはまた、アンシャールとキシャール(「天の軸」「地の軸」の意)の子、そのアンシャールとキシャールは、ラハムとラフムの子を指すようです。

仕事がキツすぎて疲れたイギギたちはエンリルに抗議します。
そこでアヌンナキ会議が行われます。
エンキは子宮の女神に最初人間の原型を作らせ、さらにその子孫達をも作らせてイギギ達の労役を追わせることにします。
1柱の神は殺されその肉と血でニントゥに粘土をこね合わせましょう
そこで一つの神と一人の人間は捏ね合わされるでしょう
※ニントゥはニンフルサグのことだと考えられています。
その後、人々が増え始めると今度は人間の労働の音が騒々しくなりエンリルは不眠に陥り、耐えがたくなってきてしまいます。
人間の騒音はあまりに大きくなった 眠ることができない
そこで、エンリルは疫病、旱魃、食料難を与え人口を減らし始めます。
エンキはそれに対し反対して二人は言い争いますが、エンリルはさらに大洪水を起こし一旦人類を全員滅ぼすことに決定します。
そこで、エンキはこっそりと『アトラ・ハーシス』に方舟建造を指示し大洪水を生き残らせることに成功します。
ギルガメッシュ叙事詩におけるウトナピ・シュテムを指しているようです。

エンリルの不眠問題を解決するためにエンキは洪水後の人の寿命を縮めるなどして問題を解決しようとします。
聖書中の大洪水のストーリーでも、洪水後人々の寿命が短くなります。
天地創造神話.3
エヌマ・エリシュと呼ばれる粘土板の記録にも天地創造に関する物語が描かれています。アッシュルバニパルの図書館から出土されました。
上ではまだ天空が命名されておらず、下では大地が名付けられなかった時
アプスーとティアマト(下図ラハムの親)から4代の神々が増えて、しだいに騒々しくなってきます。
神々が自分たちの労働に不平を言うようになります。
そんな中、マルドゥクはある計画をエアに告げます。
私はキングーの血から骨を作り、最初の人間を作ろうと思う。
その名はアメルー
マルドゥクはエアの力を借りて人を作り出します。
さらに、マルドゥクは神々を天上界と冥界に振り分け、人間を作ったことで得た解放された時間を用いて、神殿エテメンアンキと呼ばれるジッグラトを作ることにします。それがバビロンです。
旧約聖書のバベルの塔の話のモデルになった?あるいは同じ人物(ニムロデ)ではないかと言われています。
アプスーは淡水 ティアマトは海 天空神アヌが生まれ アヌが全知神アヌが生まれました。若い神々は元気がよく騒がしかったためアプスーは若い神々を殺してしまおうと思いますが、エアはそれに気がつき呪文を使って封じ込めアプスーを殺します。その後、エアが水の神となり、マルドゥクが生まれます。
聖書との比較
粘土板 | 聖書 | |
人類の作り方 | 神の血から アンウレガルラ アンネガルラ | 土からアダム アダムの骨からエバ |
人間を作った目的 | 神々の代わりに仕事をする | 動物達を従える 産めよ増えよ |
シュメールの方はいずれの場合も、神々の仕事をするため(神に対する奉仕をするため)に人を作ったとされていて、深く関わっているのがエンリルとエンキです。(実作業はエンキ)
そして、運命を定める(神託を下す)のがアヌンナキと呼ばれる集団で、そこには人を助けたい(情け深い?)神と、人を滅ぼしたい神がいることが伺えます。
また、違う言い方をすると『神々と人は違う。人には人の分がある』とする神々(エンリルサイド)と、『人とはいえ、神々のように楽しんでいいんじゃないか』とする神々(エンキサイド)がいるように感じます。
聖書の記述の中では、み使いが人の女性と関係を持ち、ネフィリムと呼ばれる巨人を生み出すことが述べられています。そしてネフィリムの増加を食い止めるため洪水で一旦リセットすることになります。
その後ネフィリムは一掃されましたが、天のみつかいの中で女性と関係を持った仲間の天使達は、天に戻ることは許されず地上に投げ落とされたことになっています。
シュメールの神話の中では、エンキが神々達を二つのグループ、天界と冥界組に分けて配置したと書かれています。